店頭でお客さまから、よくこう言われます。
「皮に蜜が出ていて、おいしそうですね」
生のさつまいもの皮についている、黒くて固いかたまり。ヤニのように見えるあれです。
実は、蜜ではありません。
正体は「ヤラピン」
さつまいもを収穫するとき、切り口から白い液がにじみ出てきます。乳液のような、とろりとした液体です。これをヤラピンといいます。さつまいも特有の成分で、ほかの野菜ではあまり見かけません。
この白い液が空気に触れて酸化し、乾いて固まると、あの黒い跡になります。畑で乾いた液が、そのまま皮に残っているだけなのです。
黒い跡があっても、甘いとは限りません
「黒い跡があるのは甘い芋だ」という話を聞いたことがある方も多いと思います。
残念ながら、これは正しくありません。ヤラピンの跡と、芋の甘さに直接の関係はないのです。
見た目が本当に蜜そのものなので、そう思いたくなる気持ちはよく分かります。私も最初はそう思っていました。

本当の蜜は、断面に出てきます
では、焼き芋の蜜はどこにあるのか。
焼いたときに、断面からあふれてくるものです。皮の表面ではなく、中から出てくる。割った瞬間に、黄金色の断面がとろりと光る。あれが蜜です。
つまり、こういうことです。
- ヤラピン=生芋の皮に、外から付着しているもの。畑でついた
- 蜜=焼いた芋の、中から出てくるもの。火が引き出した
ついている場所も、できる時期も、まったく違います。生の芋の表面を見て蜜だと思ったら、それはヤラピンです。
ヤラピンは、悪いものではありません
ヤラピンそのものは、体に悪いものではありません。お腹の調子を整える働きがあるといわれています。
ただ、ひとつだけ困ったことがあります。畑で乾いて固まる液なので、土や小石を一緒に巻き込んでいることがあるのです。
そのまま焼くと、皮ごと食べたときにジャリッとします。せっかくの一本が、台無しになってしまう。

だから、焼く前にひとつずつ削っています
imosuke では、焼く前にヒゲを取り、黒く固まったヤラピンを一本ずつ削り取っています。
上の写真の、白くえぐれているところ。これが削り取ったあとです。
地味な作業です。何本も並べて、黙々と削る。誰も見ていない工程です。
それでもここを省かないのは、冷やし焼き芋は皮がいちばん香るからです。皮ごと食べていただけなければ、いちばんおいしいところを捨てることになってしまいます。
先日、通販でお買い上げいただいたお客さまから「皮もおいしかった」という感想をいただきました。誰にも見えない工程なので、あの一言には本当に救われました。

ご家庭で気になるときは
スーパーなどで買われた芋に黒い跡があって気になるときは、その部分の皮を薄く剥いてから調理してください。ゴツゴツしているところだけで構いません。
農家さんのほうでも、収穫のときに炎でヒゲを焼き落とす工程があります。上の写真がその機械です。それでもヤラピンは完全には防げません。
農家さんも、ヤラピンが付かないよう気をつけて収穫されています。それでも完全には防げないものです。極端でなければ、品質の問題ではありませんので、安心して手に取っていただけたらと思います。
知って選ぶほうが、きっとおいしい。そう思っています。



